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2010年12月

2010年12月30日 (木)

中小企業の長時間労働を考える⑦ マネジメント上の課題

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 今日、安全配慮義務は、時間的・場所的には、単に勤務時間内、執務場所内に留まらず、契約類型としては、労働契約だけでなく下請企業の労働者、外注者にも及び、質的には単に安全に留まらず健康への配慮、適正な労務管理の執行までを含む概念に拡大しています。

 その結果、使用者たる企業は、広範な義務を負い、積極的な対処を求められています。 

 また、安全配慮義務は、その性質から、その範囲を個別具体的に検討し、確定する必要があります。

 裁判例をみても、比較的事例の多い損害賠償や健康診断受診義務の問題を除き、健康配慮義務一般を含め、自己健康管理義務の程度・内容、その履行に伴う処遇の問題、従業員の健康情報の開示・管理・利用等、検討が進んでいない分野が多く、法的な見解が確立しているとは言い難い状況です。

 よって、人事・労務マネジメントの現場では、労使共に、五里霧中で、予見可能性の範囲をどう拡張(又は縮小)するのか、模索を続けることになると思われます。

 企業の対策としては、健康配慮の観点から、①精神疾患に対応した条項②特定の健康診断や指定医師の受診義務、③個人の健康情報の取り扱いを定める条項を付加することで、就業規則の充実を図り、打ち手の選択肢を増やし対応力を高める必要があります。

 しかしながら、中小零細企業においては、いわゆる生活残業の問題があり、その低い生産性から長時間労働が日常化しており、時短やワークシェアリングの結果が収入減につながる恐れがあります。

 ここでいう生産性の低さは、企業全体と社員個人に分けて論じなければならないのですが、後者としてはいわゆる含み損人材が現在の所得に見合うため業績を上げるために長時間労働を行うケースをどう捉えるか?は難しい問題です。

 従業員間においても、その事情や価値観の相違から、対立にも発展しかねず、前述の就業規則改正では何ら対策とはならない懸念があります。

 また、使用者がとるべき法的責任の態様の項で指摘したその責任を問われる事項についても未整備で理解されていないことが多く、先ず、この整備の必要性の理解から始め、一つ一つ問題に対処し、より高度な課題を克服する根気強い活動が求められていると考えます。

 我々社労士は、市井の法律実務家として、研究を重ね、中小企業やその経営層を啓蒙し、積極的に係わっていくことが重要であると感じています。

2010年12月27日 (月)

中小企業の長時間労働を考える⑥ 労働者側の過失相殺の是非

Ssimg_5810 前回の⑤安全配慮義務における帰責性に引き続き、過労死が発生した場合に、労働者本人に何らかの健康管理に落ち度があった場合に、使用者の責任が過失相殺により減殺されるか?を検討します。

すなわち使用者の安全配慮義務違反が認められる場合に、被害者である労働者側の過失を斟酌できるかという問題です。

電通事件においては、原審(東京高判平9.9.26労判724.23)が3割の過失相殺を認めたことに対し、労働者の性格やこれに基づく業務遂行の態様等について、「通常想定される範囲を外れるものでない限り」という判断枠を用い、過失相殺を否定しました。

同判決以前においても、以後においても裁判例は、①労働者側に社会通念上責むべき事由がある場合、②本人の素因によると思われる場合、③家族に原因があると思われる場合など、総じて公平則を欠くと思われる場合には、相当額の賠償額の減額がなされる傾向を示しており、過失相殺を認めています

具体例を挙げて検証してみます。

①の場合の判例としては、システムコンサルタント事件があり、本件では、高血圧という基礎的な疾患の存在を「素因」とし、本人が精密検査や医師の治療を受けなかった点から自らの健康保持に配慮しなかったとして、5割の過失相殺を認めています。

②の場合の判例としては、川崎市水道局事件があり、本件は、健常者であれば心理的負担を感じない他人の言動であっても、精神分裂症の素因を持つ者にとっては重大な結果を導くことがあり、その場合にその損害の全額を加害者に負担させることは、公平を欠くとして、7割の減額を認めました。

③の場合の判例としては、川崎製鉄(水島製鉄所)事件があり、うつ病による自殺の事案で、本人の心因要素および改善措置をとらなかった家族の事情が寄与しているとして、5割の過失相殺を認めました。

①~⑥まで主に安全配慮義務や過労死を法律的な観点から述べてきましたが、それらを踏まえて、中小企業のマネジメントに求められる課題について、次回以降、引き続き検討したいと思います。

2010年12月22日 (水)

中小企業の長時間労働を考える⑤ 安全配慮義務における帰責性

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前回の中小企業の長時間労働を考える④ 安全配慮義務における因果関係に引き続いて、どんな場合に使用者は責任を問われるのか?帰責性について考えてみたいと思います。

前回も検討しましたように、安全配慮義務を考えるときには、相当因果関係、つまり科学的に過労が死亡の原因と証明される必要はなく、一般的に見て、他の事例や経験則から、その過労の程度が体調を崩し重篤な症状を引き起こすことがありうると認められる程度であればよいとされています。

このことからは、労働者の就労状況と死亡等の災害については、広く因果関係を認める傾向にあることが伺えます。

前述の因果関係が客観的に認められると、すなわち安全配慮義務が発生するとすると、使用者は、全く予想しない広範な事案についても、その責任を追及されることとなり不合理が生じる場合があります。

裁判例の多くは、当該発生結果の予見可能性を前提に、その結果回避義務を怠った場合に、その責めを負うものとする立場を取っています。

つまり、使用者は、全く予想できないような災害について責めを負うことはありませんし、管理者として求められる注意を払い、予測される災害等を防止する措置を執っていれば問責されません。

災害や安全という面では、比較的明瞭な区分ができると思うのですが、健康面、過労死の問題は簡単に行かないのではと思います。

それは、過労死には、その従業員に何らかの基礎的な疾患があり、仕事だけでなく、その遺伝的特性や生活習慣などの個人の要因も大きいからです。

例えば、脳卒中で死亡した従業員が、過労状態であったことは間違いないにしても、予てから高血圧の診断を受けていたにも拘わらず、ヘビースモーカーで深酒する癖があった場合はどうでしょうか?

このような場合に、使用者は責任を取らなければならないのでしょうか?

次回、引き続き検討していきたいと思います。

2010年12月21日 (火)

中小企業の長時間労働を考える④ 安全配慮義務における因果関係

Ss010 前回の③安全配慮義務法理の形成過程につづき、どのような事象があると、安全配慮義務違反に結びつくのか?検討したいと思います。

前述の電通事件(入社1年5ヶ月の大手広告代理店従業員の自殺について争われた事案)では、「常軌を逸した長時間労働をさせられ、睡眠不足により心身共に疲労困憊し、うつ病状態になり自殺をしたことにつき、長時間労働と自殺との間に相当因果関係がある」と認めた上で「労働者の常軌を逸した長時間労働及び同人の健康状態の悪化をしりながら、その労働時間を軽減させるための具体的な措置をとらなかった過失がある」として企業の損害賠償を認めました。

ここでいう相当因果関係には、業務と疾病等の間に、「当該業務がなければ当該疾病等は発生しなかっただろう」というだけではなく、当事者間の合理的な利害関係の見地から、社会通念上の相当性、「当該業務に内在ないし随伴する危険が現実化すものであり、通常生ずべき結果であり、当該結果発生についてその原因たるべき事柄との間に高度の蓋然性がある場合」という限度が設けられていると解されます。

また、近時の判例では、過労死事件における当該行為と被害との関係について、医学的・科学的正確さ、直接的・事実的関係を求めず、他の類似の現象を前提とする間接的な合理性でよしとする疫学的因果関係を認める傾向にあります。

法律論になりますと、どうしても小難しい言葉が並びますが、常識的に考えてそのようなことがあればある結果が予想される程度の因果関係で十分ということですから、相当に広範囲に因果関係が認められるということになるでしょう。

2010年12月20日 (月)

中小企業の長時間労働を考える③ 安全配慮義務法理の形成過程

Ssimg_5365 前回の②使用者がとるべき法的責任とは?に続き、中小企業の長時間労働を考えるシリーズの第3回です。

前回で言及した安全配慮義務法理が、どのような経緯を辿って形作られたか?検証したいと思います。

判例上、安全配慮義務が、最初に確定したのは、自衛隊八戸車両整備工場事件(昭50.2.25最判第3小)だとされています。

本件は、自衛官が大型車両の整備中に轢死した事案で、「国が公務執行のために設置すべき場所、施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示の下に遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべき」とし、「右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべ論拠はない」としています。

 安全配慮義務が民間企業にその適用を拡大した最初の例は、川義事件(昭50.4.10最判第3小)とされています。

 本件は、従業員が宿直中に侵入盗に殺害された事案で、「雇用契約は、労働者の業務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする有償双務契約であるが、通常の場合、労働者は、指定した場所に配置され、使用者の供給する施設、器具等を用いて労務提供を行うものであるから、使用者は右の報酬支払い義務にとどまらず、労働者が労務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示の下に労務を提供する過程において、労働者の生命および身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている」と判示しています。

 このような判例を通じ、確立された安全配慮義務ですが、当初は器具や施設等の 物理的環境の安全管理責任が主な内容でしたが、次第に変容を遂げ、人的環境の管理責任にまで拡大し、電通事件(平12.3.24最二小判)等の判例を経て、健康配慮義務を内包する概念となっています。

 平成20年3月施行の労働契約法は、その第5条で安全配慮義務について、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明記するに至っています。

2010年12月17日 (金)

中小企業の長時間労働を考える② 使用者がとるべき法的責任とは?

Ssimg_5435 前回の①過労死とは?に引き続き、長時間労働のリスクを考えるシリーズです。

過労死・過労自殺が発生した場合に、事業主が使用者として責任を問われる法的な根拠とはなんでしょうか?

企業が過労死・過労自殺及びその法的責任の発生防止の観点から重視しなければならいポイントといえるとも思います。

先ず、災害補償責任ですが、労働基準法第8章「災害補償」以下の条文を根拠に、事業主の無過失責任として定められています。

次に、民事賠償責任は、民法709条の不法行為責任、715条の使用者等の責任、民法717条の工作物の設置または保存の瑕疵に基づく責任、民法415条の雇用契約に基づく債務不履行責任など、事業主の故意又は過失を要件としています。

第三に、安全配慮義務違反は、判例法上形成された使用者の信義則上の義務で、使用者の故意又は過失を要件にしています。詳細については、次回で検討します。

第四に、労災保険料について、メリット制の適用を受ける事業主においては、過労死・過労自殺による多大な賠償の発生により翌期の保険料の増大を招くことになります。

その他にも、労働安全衛生法上の刑事責任、刑法の業務上過失傷害ないし致死責任が考えられるところです。

次回は、安全配慮義務違反の形成過程を検証します。

2010年12月12日 (日)

「未払賃金立替払制度」まで事業仕分け、民主党迷走続く

Photo 連合など労働界が激しく反発していることを受け、厚生労働省は、事業仕分けで「原則廃止」と判定された「未払賃金立替払制度」について、従来通り存続させる方針を明らかにしました。

未払賃金の立替払制度は、「賃金の支払の確保等に関する法律」第7条により、企業が「倒産」したために、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払賃金の一定範囲について労働者健康福祉機構が事業主に代って支払う制度です。

立替払をする額は、「未払賃金総額」の100分の80の額です。ただし、立替払の対象となる「未払賃金総額」には上表の通り退職時の年齢に応じて限度額が設けられておりますので、この限度額を超えた場合は、その限度額の100分の80となります。

民主党の迷走、ここに極まれりです。

そもそも未払賃金ですから、働いた正当な対価をもらえなかった方たちを、最後の最後に支えるセーフティネットを断ち切ろうとしのです。

働きもせず、税金も払わない人間への給付には熱心な不思議な似非左翼政権ですが、子ども手当の財源欲しさか、不勉強にもほどがあります。

事業仕分けしたのはいいが、最大の支持組織・連合の一喝で元の木阿弥は酷すぎます。

四列目の男も結構ですが、半年もやったのだからもういいでしょう。

鳩山、菅と二人続いての為体、憲政の常道に従って、即刻総辞職阿するか、解散総選挙すべきでしょう。

組合の押し上げにより心太方式で議員になった人たちは、我が身かわいさで立ち往生でしょうか?

日本には、そんな余計な時間はないと思います。

2010年12月 7日 (火)

株式会社ネオ倶楽部 第11期経営指針発表会②

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経営指針発表会には、恒例の行事があります。成績優秀者の表です。

様々な項目があるのですが、今年の最初の表彰は、ダブル・ワーク賞でした。

この賞は、育児休業から復帰され、子育てと仕事に奮闘する社員の方が対象で、該当者は二名いらっしゃいました。

40名の所帯ですから、子育て支援会社として、胸を張ってもいいと思います。

表彰には、やはり常連の方がおり、頼もしい限りですが、昨年見なかった顔をステージ上で拝見することはとても嬉しいことです。

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企業が年輪刻み、人が成長する場面に立ち会う。

一年に一度だけ、同じ場所で見る定点観測は、企業の伴走者のたる私たちへの御褒美なのかもしれません。

栁川社長は、三人の創業メンバーと力を合わせ、個性豊かな社員の方々と、粘り強くモザイクを作り上げて来られました。

魅力的なリーダーが居て、そこに人が集まる。

自然界の法則のようですが、そのモザイクが危うさよりも、多様性による力強さを感じさせるのは、稀有なことだと思います。

特に中小企業においては。

Ssimg_5724これは、社員の方が、Thank you messageで作ったクリスマス・ツリーです。

ひとひとつ思いのこもったメッセージを読みながら、経営者としては至福のときではないでしょうか?

栁川社長と社員の皆様のご活躍を期待しております。

また、来年も定点観測の栄に浴せますよう願っております。

2010年12月 4日 (土)

株式会社ネオ倶楽部 第11期経営指針発表会

Img_5699 栁川敏昭社長率いる株式会社ネオ倶楽部の経営指針発表会に参加しております。

2000年、ミレニアムに創立した同社は、期を重ねて11期、益々充実されて来られました。

今年は、「大人の会社になられたな」という印象です。

若い社員の方が多いのですが、厳しく実り多い一年を過ごされたと見えて、非常に引き締まっていい面構えになられたように感じました。

同社の経営理念には、社会貢献が掲げられていますが、学生支援事業を通じ新卒の就職支援を行われると同時に、自社においても新卒の採用を積極的に行っておられます。

私も事務所にも、同社の新卒支援事業のご縁で、来春新卒の社員が入社します。

今年の資料には、経営指針書の他に、「株式会社ネオ倶楽部 スタイルブック」があり、経営理念から始まり、行動指針、チェックシート、クレーム方針から災害発生時の対応まで、社員のマニュアルとして整備されています。

巻末には「元気の出る名言集」まであり、心憎いといいますか、遊び心も「らしい」感じです。

新卒採用を行う会社には、必須のアイテムだと思いました。

素晴らしい内容ですので、私どもの顧問先にもお奨めしたいと思います。

今から栁川社長のお話が始まりますので、続きは後日のお楽しみとさせていただきます。

2010年12月 3日 (金)

中小企業の長時間労働を考える① 過労死とは?

Ssimg_5413  長時間労働はない方がいいし、過労死や過労自殺の発生を誰も望んではいないでしょう。

ワークライフバランス、仕事×家庭×地域社会の均衡がとれてこそ、創造的な仕事ができる。

とは、理屈では言えます。

資本主義社会の要点は、「時は金なりTime is money」、効率よく働いてこそ利益が生まれる。

これも、もっともな話で、誰も異を唱える人はいないでしょう。

中小企業の現場において、長時間労働が無くならない理由は何でしょうか?

経営者の思想、資質も問題でしょうか?

それとも従業員の資質の問題でしょうか?

「過労死と安全配慮義務」の法的検討を行いながら、その問題の所在、その原因等を考え、中小企業がとるべき施策を検討していきたいと思います。

【過労死とは?】
 過労死とは、厚生労働省の認定基準によれば、「仕事上のストレス、長時間労働による疲労等、業務上の過重負荷により脳・心臓疾患を発症し死亡に至ること」と定義されています。脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞などの急性脳・心臓疾患の発症については、本人の資質や生活習慣に負うところも大きく、その病気の性質から既に何らかの基礎疾患や既往症があり、それが過重労働により、その自然的な経過を超えて悪化した場合だと考えられます。

最近では、前述の過労死に加え、過労自殺の問題が発生しています。過労自殺は、厚生労働省の認定基準によれば「仕事上のストレスが原因により精神障害を発病しての自殺」と定義されています。

ここでいう厚生労働省の基準とは、労災適用基準であり、平成21度年実績で、過労死の労災決定件数709件(うち支給決定件数293件)、過労自殺の労災決定件数140件(うち支給決定件数63件)と看過できない数値となっています。 
 労災の認定は、被災労働者の遺族が、企業に対して民事賠償責任を追及することにつながり、引いては、訴訟に発展するケースもみられ、過去の裁判例でも巨額の賠償責任に任じることもあることから、過労死・過労自殺の防止は、企業の大きな課題となっています。

つづく