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理念から始める会社のルール、就業規則 Feed

2011年10月 4日 (火)

会社のルールを考える23 うつ病など精神疾患への対応

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 ある日、会社に内容証明郵便が送りつけられてきました。

それは30歳代の中堅社員Xからの休職通知でした。医者の診断書も添付されており、病名は「うつ病」で一ヶ月の加療が必要とされていました。

 詳しいことを知ろうと上司が、Xの携帯電話に掛けても応答が無く、しばらくしてメールがあり、「病気に良くないので会社とは連絡をとらないよう医者から言われている」とのことで、それっきり、連絡が取れなくなります。

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 自宅に行ってみましたが、家族が「医者から会社と連絡取らないように言われている。医者に連絡してくれ」というばかりでXには会わせてくれません。

 主治医に問い合わせても、プライバシーの問題と言うことで何も話してくれません。

 休職期間(もっともXが勝手に宣言したものですが)が満了しようかという頃、2通目の内容証明が届きます。

 前回の通知と同様の内容が書かれていました。

 ただ、傷病手当金の申請書が添えられていたのは少々違いましたが・・・。

 この頃になりますと、同僚の社員からXをデパートで見かけたとか、居酒屋で飲み歩いている、コンサート会場で会ったとか、とてもうつ病で加療中とは思えない情報が飛び込んできます。

 果ては旅行先から写メールが届いたとかで、上司も同僚も困惑の極みです。
 

 Xに病状確認のメールを入れたところ、やっと返事があり、「買い物などの日常生活に問題はないし、旅行やコンサートは良い気分転換になるので医者からも薦められている。」とのことで益々わけ分かりません。

 休職期間満了を翌月に控えて、会社は何らかの判断、処分を下さざるを得ないことになりました。事情を調べても外観的には「問題社員」としか思えないけれど「うつ病患者」なわけで、精神疾患として慎重に取り扱っていくことになるのですが・・・。

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 臨床心理士で社会保険労務士の涌井美和子さんによりますと、従来のうつ病の枠組みでは捉えられない症例が増えているそうで、「新型うつ」の特徴を次のようにまとめておられます。

① 自分の好きな仕事や活動の時だけ元気になる(うつ症状が軽くなる)
② 「うつ」で休職することにあまり抵抗がなく、休職中の手当など社内制度をよくチ  
ェックしていて、上手に利用する傾向がある
③ 身体的疲労感や不調感を伴うことが多い
④ 自責感に乏しく、他罰的で会社や上司のせいにしがち
⑤ どちらかというと真面目で負けず嫌いな性格

 まったく最悪ですが、「うつ病」を避けて通れないのも、現代日本の労務管理の実情かも知れません。

 対策としましては、就業規則の休職規程を次のポイントで整備することになります。

① 受診命令に関する規定をおく
② 復職の可否判断に関する規定をおく
③ 復職手続きと労働契約終了に関する規定をおく
④ 休職期間の通算に関する規定をおく
⑤ 再休職に関する規定をおく

 新型うつについては、これからの対処や取り組みがスタンダードを作っていくことになるでしょうから、今の時点で遭遇した使用者は大変です。

 しっかり脇を閉めて、対処しましょう。

2011年9月30日 (金)

会社のルールを考える22 残業手当を減らしたいなら

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 企業存続を重視し、経営者サイドで就業規則を作成する意味は、その中小企業という集団の中で、経営者のみが「儲かる仕組み」を構築する能力を持ち責任を担うことができると思うからです。ここで責任とは、構築するまで止めないという不退転の意思と置き換えても良いと思います。

 こうした経営者を守ることは、スキッパーを信頼し誠実に業務遂行する社員を守ることに他なりません。また、私どもが「儲かる仕組み」といのは、不法行為による利益捏造ではなく、あくまで合法的なものです。

 残業についての私どもの考え方は次の通りです。

① 生産性が変わらない(もしくは下がる)のに、時間により割増が支払われるのは不合理。
② 所定内で終わる社員より所定外まで掛かる社員の方の賃金が高くなるのは不公平(特にホワイトカラーにおいては顕著)
③ 用水光熱費など経費が余分にかかり、過労死等のリスクもあり「高くつく」 等

 企業にとって、操業により効率アップが見込める製造業を除き、メリットがないと思うのです。メリットがないものにプレミアムを付けて支払う残業手当というものは、経営的には、ある種の「罰金」に過ぎず、多くを支払うことは無駄なことです。
 

 旧来、中小企業では、社内的な職制上、部長・課長・店長等の役職者については、労働基準法第41条二号に定める管理監督者に該当するものとして時間外手当を支給せず役職手当で対応してきましたが、いわゆるマクドナルド事件で「名ばかり管理職」の問題が顕在化し、役職手当や固定残業手当の設定で一律に対処することは難しくなりました。

 残業手当は、上図の式で求められます。

 

残業手当を減らそうと思ったら、次の事項の組み合わせになります。
① 算定基礎給を下げる
② 所定労働時間を増やす
③ 割増率を下げる
④ 所定外労働時間を減らす

①については、昨今の年俸制や成果主義賃金で外していった手当(住宅手当、家族手当、別居手当、子女の教育手当、通勤手当等)を復活させ、上手に活用することです。

②については、分不相応な休日や所定時間の設定を止め、変形労働時間制や休憩時間の適切な設定により、法定労働時間の限度まで所定労働時間を引き上げることです。

③については、代休の活用や営業職などであれば歩合給を設定することにより下げることができます。

④については、時短を進めることは当然として、時間外の立証責任を社員側に負わせることで無駄な残業の発生を抑える工夫をすることです。

 経営者は「できない約束はしないこと」です。経営者に求められる資質をアンケートすると、日米ともに、「経営力」の項目以上に「誠実さ=Honesty」が重視される傾向があります。良い恰好をせず、正しい努力を積み重ねること、「今できることをする勇気」と「今できないことに耐える智恵」が求められています。

2011年9月29日 (木)

会社のルールを考える21 問題社員への対応

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 モンスターペアレント(学校に対して自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者)、モンスターペイシェント(医療従事者や医療機関に対して自己中心的で理不尽な要求果ては暴言・暴力を繰り返す患者や、その保護者)等)や悪質クレーマー(製品・商品などに対して苦情を申しつける際に、過剰に被害者を演じ、時には恫喝とすら思えるような行為に及ぶ者)の出現を経て、社員のモンスター化が進んでいます。

 問題社員のモンスター化を許す背景には、従業員が高学歴化やインターネットの普及により法律知識を豊富に持つようになったのに反し、使用者は旧態依然として、法令違反や就業規則、労働契約などの不備を放置していることがあると考えられます。

 中小企業、とりわけ小規模の事業場にとって、チームワークを乱す社員の存在は、非常に大きな問題です。少数の社員でマルチタスクを行う日常から、コネクトワークとでも言うべき濃密な協業が必要とされるからです。鎖で繋がれた小舟の船団のようなもので、一隻が沈めば全船沈没です。

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 このような問題は、大きな失態を契機に耐えられなくなった同僚社員が、申告することで顕在化します。それまで、社長も少々折り合いが悪いのだろう程度には感じているのですが、仕事ではままあることで重視していないことが多いのです。

 申告した社員は、問題社員の行状について、「そこまで!?」と社長も驚く事実を上げてきます。相談事例から共通項を上げていきますとこんな感じです。

① 信じられないような簡単なミスを連発する。
② ミスをしたことにすら気づかない。
③ 注意すると「逆ギレ」するので改善も期待できない。
④ 暴言を吐いたり、書類を投げつけたりするなど、感情の制御ができない。
⑤ 「できない」「時間がない」等を理由に仕事の分担を拒否する。     等々  

 由々しき事態と気づいた社長が、他の社員からも事情聴取しますと、堰を切ったように話し始めます。内容は申告社員と同様かそれ以上のことも多く、結論は「これ以上、一緒にはやれない。」となります。
 

 ここまで来ますと、社長も自分の船団が嵐の只中にあり、一隻を切り離さないと全船が沈没すると悟り、慌てて断を下すことになります。伝家の宝刀「解雇権」の発動です。

 緊急避難として性急に行われるとトラブルは避けられません。問題社員は、権利主張と被害者意識だけは強いので、労働基準監督署をはじめ公的機関や労働組合に駆け込み労使トラブルとして顕在化します。

 問題社員が、あっせんや調停、労働組合等を通じて行う主張は、「?」の連続です。同僚社員が申告した事実関係について全くといってよいほど認識がないのです。

 申し立て文書の内容だけでなく、実際に面談しても変わらず、事実を指摘しても理解できない様子で、「そんなことなら言って貰えばよかったのに。」と何ともトンチンカンな答えが返ってきたりします。

 個別労使交渉をするようになった当初は、「交渉戦術」なのだろうと思っていました。そうでないとしたら、「都合の悪い真実」から自分を守る一種の防衛本能みたいなものだろうと思っていました。

 しかし、最近では、問題社員は自分のミスに本当に気づいていないのではないか?と思うようになりました。

 仕事に取り組まれる方ならどなたでもお分かりいただけるのではないかと思いますが、「仕事は小さなミスとリカバリーの連続」といえるのではないでしょうか?ベテラン社員が若手社員に「犯したミスを自分でリカバリーできたらそれはミスじゃない。」とアドバイスされる場面がありますが、そこに深い意味があるように思います。

 問題社員は、そもそも気づかないからミスを連発するのではないでしょうか?

 指示された仕事の範囲で自分にできることまでしかしない、つまりは仕事を自分で完遂した経験がないのです。本人が知らないうちに、上司や先輩、同僚がリカバリーするのが常態化して、「気づき」の機会を持てないまま、全体感などさらさら縁がありません。

 こういう方の履歴書をみると、新卒採用された会社も2年保たず、その後も派遣や契約社員で1年に満たない退職を繰り返しています。

 面接では「自分は出来る」と主張するものの蓋を開けてみるとギャップが甚だしいとなります。本当の職業経験がないから当然です。

 「何となく周囲とうまくいかない」のですが、理由が全く分からない。自分に原因があるなどとは露ほども思っていません。これも一種の悲劇と言えるでしょう。

 最初の会社で「厳しい育成」の機会があったなら?と思うのですが、バブル崩壊後の企業の状況では無理からぬことのようにも思います。上司や同僚も多忙で育つかどうかも分からない「戦力外」の人物に関わっている暇があったら、自分でやった方が早く、仕上がりも良いのですから、ある意味、至極合理的選択です。
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 「君子危うきに近寄らず」ですから入社させなければいいのですが、「猫の手も借りたい」中小企業では無理な話で必ず入ってくるわけです。

 問題が発生したら解雇では大きなトラブルになり、時間もお金も掛かり何の良いこともありません。

 経営者や上司の方には、悲劇を繰り返すことがないように、「言いにくいこと」を言って欲しいと思います。「ミスが多い」「協調性がない」ことを具体的な事例を挙げて指摘してください。

 仕事に即したことですから、全人格を否定するわけではありませんので、遠慮は禁物です。直ぐに「割り切って」解雇する前に、「腹を決めて」育成する姿勢を示して欲しいと思うのです。

 後は、採用→試用期間→本採用→解雇と続く流れを就業規則に則って、合法的、段階的に行えば、問題社員が改善できず、結果、解雇や退職で終わっても、大きなトラブルにはなりません。

2011年9月28日 (水)

会社のルールを考える⑳ Average Aboveの発想

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  一般に、人事制度改革は、各部署から選ばれたメンバーでプロジェクトチームを立ち上げ、進行させていきます。

 プロジェクトメンバーは、各部署の次代を担うエースであることが多く、チームは自然と優秀者の集まりになってしまいます。
 
 ファシリテータとして難しいのは、ハイレベルの議論を行いながらも、目線はAverage Above(真ん中のちょっと上くらい)の水準に合わせて行くことです。

ビジネスモデルを考えるときも、社員に求める能力、労働の投入量や組織への献身は通常程度のものを想定します。

光通信は、その独特の営業手法をはじめ毀誉褒貶のある会社ですが、ビジネスモデル構築にも徹底した発想法があるそうです。
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  そのキーワードは「うちの社員はウルトラマン」というものです。

 さすが猛烈営業マンでならす同社のこと、スーパー営業マン=ウルトラマンかと勘違いしましたが、実のところは、全く違いました。

 「うちのような企業には優秀な人材は来ない。せいぜい中の下、集中力も並以下だ。」

 「3分以上集中できないし、3分を超える営業トークも覚えられない。地上では、3分間しか戦えないウルトラマンと同じだ。」

 「だからウルトラマン社員でもできるようビジネスを3分以内のユニットにし、徹底してマニュアル化する。」

 同社には徹底した凡人戦略化の発想があるのです。

 同社からスピンアウトした経営者にお目にかかりますと、確かにルール化能力に長けておられる印象があります。

 人事制度においても制度に反応し良くも悪くも変わるのは中間層ですから、真ん中のちょっと上くらい人材を想定して取り組むことになります。

 優秀者の知恵を集めて、中間層にウケる制度を作り、中の上の社員をいかに活性化するが、人事制度プロジェクトの肝ということになります。ゆめゆめ優秀者の優秀者による優秀者のための人事制度にならないように配慮ください。

2011年9月27日 (火)

会社のルールを考える⑲ マネジメントの持論を持とう

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 経営者に限らず管理職になる頃には、「人間観」とでも言いますか、「人はなぜ働くのか?」に対する自分なりの答えを持つようになるのではないでしょうか?

 学者の「理論」に対して、実務家の「持論」は、マネジメントや業務の実践を通じて培った自分なりの「仮説」といえると思います。実務に耐えうることを実証された「仮説」とも言えるでしょう。

 人間観、モチベーションについての理論といいますと、D.Mcgregorの「X理論・Y理論」が有名です。

 いわゆる学者の「理論」として認識されていると思いますが、実際には、1950年代アメリカの経営管理者に対する多面的アンケートにより、当時の経営管理者の「持論」を引き出しまとめたものだそうです。

 同じ時代、同じ国、同じ管理職でも、異なるタイプの仮説があったことは、非常に興味深いと思います。どちらが優れているとか、上位だとか、善悪の問題ではありません。

 【X理論】

  ふつうの人間は生来仕事が嫌いで、できることなら仕事などしたくないと思っている

  大抵の人間は、強制されたり、統制されたり、命令されたり、脅かされたりしなければ、きちんと働かない

  普通の人間は、命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、あまり野心を持たず、なによりもまず安全を望んでいる。

 

Y理論】

  仕事で心身を使うのはごくあたりまえのことであり、遊びや休暇の場合と変わらない。

  ひとは自分から進んで身をゆだねた目標のためには、自らにムチを打ってでも働く。

  献身的に目標達成に尽くすかどうかは、それを達成して得られる報酬しだいだが、なかでも自我の欲求や自己実現の欲求が重要である。

  ふつうの人間は、条件次第では責任を引き受けるばかりか、自ら進んで責任をとろうとする。

  企業内の問題を解決しようと比較的高度の想像力を駆使し、創意工夫をこらす能力は、たいていの人間に備わっているものである。

  現代の企業において、日常、従業員の知的能力の一部しか生かされていない。

 

 実は、X理論とY理論の真骨頂は、X理論の上司にはX理論の部下が、Y理論の上司にはY理論の部下がつく、そうなってしまうことだそうです。

 どちらがあなたの持論に近いでしょうか? 

 自分の持論に基づいたルール作りが、社員に浸透する近道です。

 

2011年9月26日 (月)

会社のルールを考える⑱ やればやっただけ支払うというけれど

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  経営者の方と賃金制度の検討をする中で、「頑張る社員には、やればやっただけ支払いたい」というフレーズをよく耳にします。

そもそも、起業家の半数以上が自分の報酬に不満を持っている現状もあり、中小企業の資金繰り事情を考えると、不可能とまでは言いませんが、長期にわたって維持できると制度ではないと言わざるを得ません。

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確かに優秀社員は絶対額は高くなりますが、成果に対する配分率としては新入社員が最も高くなり、優秀社員が低くなります。

 

上のグラフは、貢献と給与の関係を表したものです。

 

貢献度は仕事の習熟度に従いS字カーブを描きます。

 

会社全体で考えますと、習熟度が高く給与以上の貢献を行うR層が、稼ぎのない未習熟なI層を支えその育成期間を担保する構造になっています。

 

組織の維持拡大を前提にすると当然の帰結といえるのですが、中々ご理解いただけません。

 

焼肉に連れて行って、「今日は食べ放題、俺の奢りだ!」といった後に小さく「皿にあるだけね。」と言うようなことになりかねませんからお奨めできません。

 

やればやっただけタイプの社長は、仕事の報酬として金銭を重視する余り、モチベーションも金で買う感覚で、高額の役職手当を設定しておいて、「働け!なぜ働かない!なぜ機能しない!」とやってしまう傾向にあります。

 

社員は、高額の役職手当は貰ったものの何をしたら良いか分かりません。前任者は会社を去っていますから真似る見本もありませんし、明らかに経験も準備も不足です。このままでは前任者の二の舞は確実ですから、担当者の仕事を奪って自分の業績を嵩上げしたり、果ては役付を拒むケースがでたりします。

 

企業と社員の成長サイクルや時間軸を軽視されることは好ましい結果につながらないことが多いようです。

 

しかし、徹底的な短期業績主義の会社では、事情が違います。

 

社員も会社に対して短期の金銭報酬を期待していますから問題は起こりません。

 

ところがこんな会社に限って、「誠実、教育、成長」の社是があったりして、自分ルール→経営理念→ビジョン→経営計画→就業規則の流れが捻じれていたりします。

 

捻じれが生じている場合は、就業規則の問題にとどまらず、流れを遡り、是正する必要があると思います。

2011年9月22日 (木)

会社のルールを考える ⑰民事で勝てる就業規則?

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民法の契約自由の原則の活用やその知識の重要性は前述しましたが、最近の就業規則に関する書籍やセミナーでよく耳にするフレーズに「民事で勝てる就業規則」があります。

 研究熱心で判例好きの社労士が好きそうなフレーズですが、要注意だと思います。過去の判例を重んじる余り、それを抽象化し、絶対視してしまう傾向があります。

  就業規則作成に当たっても、法規の範囲を不要に広げて判例法においても必ず認められるところまで勝手に引き下がってしまうのです。

  もともと中小企業においては、労基法を守るのに汲々としている現状を考えますと、過大な負担を自ら課すものであり、問題です。

  判例は、法規範には違いありませんが、具体的事件の個別判断に過ぎません。判例は裁判官を拘束するでしょうが、そもそも裁判所まで行くトラブルは稀なケースです。大多数の労務トラブルは現場で起こり現場で解決されています。

  就業規則は、「どこに出しても大丈夫」といったレベルは必要とされないと思います。法律論で完勝する必要はなく、トラブル発生時に五分五分で相手方と対峙できれば、実務上、問題ありません。

  まず、契約自由の立場から会社の必要とするルールを考え、最小限のリーガルチェックを行うことです。「これには○○社事件という判例があって・・・」とか、「この規定は認められない可能性がある」と言われても、補足説明としては親切かも知れませんが、もう一歩進み、NOだけでなくYESをいうことも重要なことです。

  契約自由の原則を主張するためには、就業規則が労働契約の規範と認められることが必要であり、そのためには「周知」が必須条件です。就業規則が金庫の奥に眠っているようでは論外ですが、周知だけでなく、一歩進めて「徹底」できるルールが望まれます。

 

2011年9月21日 (水)

会社のルールを考える ⑯就業規則に労基法は要らない?

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 就業規則だけでなく、労務管理において労働基準法等の法令遵守は大原則ですが、それだけではよりよい差別化したものはできません。

 雇用において、労基法は民法の特別法に当たるのですが、その目的は「労働者の保護」です。保護は自由経済のサブシステムとして機能するものであり、真に創造的な労務管理=長期的に差別化し競争力を維持できるものに資するとは考えられません。

 就業規則を検討されるとき、手っ取り早い方法としてモデル就業規則などひな形を利用されるケースが多いと思いますが、問題が多いと言わざるを得ません。官製のものも含め市販されているモデル就業規則は、労基法、施行規則および行政通達から出来上がっているからです。

 企業がその自由な活動を維持し従業員とWin−Winの関係を築くには、保護法規や規制法規からの発想では駄目なのです。

 そこで一般法であるところの民法の出番になります。

 民法の指導原理は、 私的自治(契約自由)の原則、 所有権絶対の原則、 過失責任の原則の三つです。

 私的自治の原則とは、「個人は社会生活において自己の意思に基づいて自由に契約を締結して私法関係を締結することができ、国家はこれにできるだけ干渉しない。」とするものです。

 特別法たる労基法はその守備範囲が極めて狭く、雇用の多くの場面で一般法であるところの民法の指導原理が活かされてきます。

 企業の自由でダイナミックな活動を守るには、民法の知識が不可欠となるわけですが、それを活かした就業規則が少ないのが現状といえるでしょう。

 十分な知識を持った方が作成しても、活用の方法を誤ると逆効果になり、「モデル就業規則の方がまし」の事態となることも考えられますので要注意ともいえます。

2011年9月20日 (火)

会社のルールを考える ⑮就業規則の限界

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よくセミナーや書籍で、「会社も納得、社員も満足の就業規則」とか「やる気のでる就業規則」などの言葉が踊っていますが、少々疑問に思います。

 就業規則は、ハーズバーグの「動機づけ=衛生理論」でいうところの衛生要因ですから、積極的にやる気を引き出すような効果には自ずと限界があります。

 就業規則により労働条件が明確となり、法令遵守と相まって、従業員をマズロー階段の三段目・社会的欲求まで登らせることはできますが、それが自己実現の欲求などさらに高位の段階へ進むかどうかは未知数です。

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 マズローの欲求五段階説は、「衣食足りて礼節を知る」ということわざに通じるところがあり、センター試験にも出題されるほど、馴染み深い理論ですが、下三段は外発的動機、上二段は内発的動機で構成されており、別の山を継ぎ足したような構造で矛盾もはらんでいます。

 上二段を求めるなら、就業規則単体では難しく、自分ルール→経営理念→ビジョン→経営計画の流れにより価値観をシェアする必要があります。

2011年9月16日 (金)

会社のルールを考える ⑭ 就業規則の位置づけ

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マネジメントの見地からすると、自分ルール→経営理念→ビジョン→経営計画と進んで、やっと就業規則の出番となります。

 経営者の仕事は、煎じ詰めると、経営の方向性を定め、経営資源を配置し、人を動かすことだと思いますが、就業規則は、「人を動かす」についてのルールを定めたもの、自分ルールや経営理念が総論としますと、人に対する各論と位置づけられると思います。

この位置づけからしますと、労働基準法第89条に定められた作成及び届出の義務の規模(常時10人以上の労働者を使用する使用者)に満たない事業所でも作成されるべきものとするのが妥当でしょう。

就業規則は、労働基準法に必須事項が定められる他、労働契約法、育児・介護休業法、パートタイム労働法、高年齢者雇用安定法や労働安全衛生法など、関係諸法令による多くの規制は受けるものの、法令に抵触しない限り最大限、私的自治が尊重されるわけですから、規制法律からでなく自分ルールから自由に発想されるべきでしょう。

 法的には、使用者である企業にとって就業規則の役割・目的は「労働条件の明確化と秩序維持」となるのでしょうが、もっと積極的に、経営者の人に対する考え方をシェアするツールとしても活用できると思います。